国際障害者年を知っていたことと、障害者への理解がそのまま結びつくわけではないが、他の意識調査を見ても、ほとんど9O%前後の人々が、障害者問題について、よい理解を示しているかのように見える。
同じ総理府の調査によると、74%が「障害者問題に関心があり」、49%の人々が「わが国の福祉はあまり行き届いていない」と指摘している。
こうした意識調査の結果を障害者や親の集まりで示すと、信じられない顔をし、ときに苦笑すら聞かれる。
障害者への関心(話題にすることがあるか)障害者に関する世論調査(総理府. 1987年7月)総理府の障害者対策推進本部は1987年七月、再び「障害者に関する世論調査」を行なった。
それによると、「障害者に話しかけたり手をかしたりしたことがある人」は46.6%で、前回の23%と比べると、ふれあいを経験した人がかなり増えてはきている。
また、障害者のためのボランティア活動に参加したことがある人は11.1%、「今後、機会があれば参加したい」と思っている人は47.6%もいる。
そして障害者のために、国や地方公共団体は「福祉サービスの充実」(27.8%)、「雇用就労の場の確保」(27.6%)をすべきであると考えている。
確かに障害者が町に出やすくなったし、町で見かける障害者も増えてきた。
しかし市民たちが、建前はともかく、本音で歓迎していると単純に見るわけにはいかない。
「福祉サービスの充実」が必要といいながら、施設を作ろうとすれば反対運動が起きる。
地域で生きようと、アパート探しをする人も増えているが、障害者だというだけでことわられてしまう。
こんな体験を抱えている人たちにとって、意識調査の結果が良かったからといって、それが本当の理解に結びつくとは信じがたいのである。
意識調査で高い理解を示した人たちに、「一緒に食事をしてくれますか」と聞くと、嫌がる人がいる。
「一緒に入浴は」となると、さらに拒否的になり、「結婚相手として考えられるか」と聞くと、ほとんど1OO%拒否に変わってしまう。
単なる知識としては理解を示しても、かかわり合うことはいやだというのであろう。
総論賛成、各論反対の現実を改めて知らされることになる。
総論賛成、各論反対数年前「エレファントマンという映画が話題を呼び、多くの人々の同情と感傷の1択を誘ったことがある。
そのとき稀少難病者全国連合会という難病団体が「エレファントマンのわたしたち、一生に一度、のびのびとお風呂に入ってみたい」というチラシを道行く人々にくばり、理解を訴えた。
エレファントマンは空想上の存在ではなく、レックリングハウゼン病という難病の一種であり、身近な存在なのである。
彼らは就職もできず、風目付の部屋も借りられず、外に出ること指文字も大切なコミュニケーションの1つ(東京・世田谷の雑居祭で)もできず、ひっそりと暮らしている。
在日黒人が銭湯での入浴を拒否された事件があったが、障害者の多くは同じ差別を受けているのである。
国民の障害者に対する理解が深まったといわれる国際障害者年に、皮肉にも障害者施設の建設をめぐって各地で住民の反対運動が起きている。
全国的にも問題になった埼玉県鳩山村での自閉症者施設「けやきの郷」(後述)をはじめ、東京都内だけでも三鷹市、小金井市、調布市、中野区、世田谷区、西多摩郡日の出町などで、施設づくりに反対する住民運動が起こった。
これらの反対者も、必ずしも障害者福祉の推進に反対しているわけではない。
「施設づくりに反対するわけではないが、何も自分たちの町に作らなくても」といい、「環境が破壊される」「地価が下がる」などを理由にあげている。
矢口養護学校への反対運動1973年、政府は「福祉元年」を宣言した。
また、この年、文部省は養護学校の義務制を1979年度から実施すると政令で公布した。
東京都はそれに先がけて希望者全員入学を74年から実施することを表明、15校の養護学校の建設を計画した。
その1つ、矢口養護学校を大田区に建設するため、東京都では74年6月1O日着工の予定理解よりも,ふれあいで準備を進めていた。
ところが着工の日が迫ると、地元商店街が突然「精薄養護学校絶対反対」ののろしをあげた。
「子どもが商店街をうろうろして品物が盗まれる」「若い娘が外へ出られない」などの反対理由をあげて、猛烈な反対運動を起こした。
駅前の商店街に軒並み「精薄の町・矢口に断固反対」「ゴミと精薄お断わり」など、どぎつい看板が2夜で現われ、反対運動が大きく表面化した。
地元の町会長は「事前に何の相談もなく養護学校を押しつけられた。
住民のエゴといわれようと、イヤなものはイヤだ」と反対運動を始めた理由を挙げている。
これに対し、東京都精神薄弱者育成会のO事務局長は「反対運動の看板を見てあ然とした。
心身障害児に対する感覚は10年以上もずれている。
精神薄弱児を差別し、軽蔑する人がこんなにもいたことは驚きである」と怒りをぶつけた。
町会長は「理屈に合わないことはよくわかっている。
でも、それは、この町に住んでいない人のいうことだ。
われわれも決して、知恵遅れの子どもを持つ家族にそんなことをいうつもりはない。
地元を無視した役所に対して、あの看板をぶつけたつもりだ」と、精神薄弱児に対する偏見があっての反対ではないと主張した。
この間、地域の教師、PTA、障害者団体などが「矢口養護学校をつくる会」を結成、街頭署名や戸別訪問を行なって理解を求めた。
商庖街では5軒に3軒が「理解はしている。
しかし署名は勘弁してほしい」と拒否、なかには「あんな子に教育して役に立つのか」「なぜ無駄な金をかけるのか」などといわれ、若い女教師が涙ぐむ場面も見られた。
だが反対を続けていた商匝会などは31カ月後、O区長の斡旋を受け入れ、ようやく建設に同意した。
区長の斡旋案は、養護学校の中に談話室を作り、地元住民も使えるようにする、学校側と地元住民とで協議会を作り、養護学校にかかわる問題について話し合うなどであった。
混乱の直接の原因は、着工の直前になって地元に計画を知らせるという、行政側の不手際であったが、背景には障害児に対する偏見があったことは否めない。
「けやきの郷 の場合障害者の生活の場は、施設から地域へと移りつつある。
ノーマリゼーションという考え方が定着するにつれて、同じ施設であっても、居住施設より通所施設を望む声が強い。
しかし、高年齢の障害者を抱える年とった親たちは、終身保護が可能な施設を求めている。
また、家庭での世話が困難な障害児、例えば動きの激しい自閉症児を持つ親たちは、成人になった自閉症者の施設つくりのために奔走している。
1981年、三重県三重郡菰野町に全国初の自閉症者施設「あさけ学園」が開園した。
その理解よりも,ふれあいをあと東日本では、埼玉県に住む自閉症児の親たちが「けやきの郷」設立準備会を結成して、983年開園を目指していた。
1O年がかりで捜し当てた埼玉県比企郡鳩山村の国有林の貸与を地元営林署からとりつけたが、地元の鳩山ニュータウンの住民から「性犯罪を起こす怖れがあるのではないか」「私たちには先住権がある」「他にも候補地があるのに、なぜ鳩山ニュータウンを選んだのか」など、反対の声があがった。
鳩山ニュータウンは、日本都市開発公社が1973年に着工した2戸建て分譲住宅地。
都心まで2時間かかるが、入居者の7O%が東京都内への通勤者で、人口は5354人、鳩山村全人口の過半数を占めていた。
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